ついに僕にも待望の第一子が誕生した。
今回はその出産に立会った時のお話を…
出産に立会うべきか悩んでいる男性も多いと思います。
そんな方々の参考になればと思っております。
長文になるので、まずは本の紹介から…
立会い出産に興味のある方は、先の続きをどうぞ。
■真夏のオリオン/監修・福井晴敏/著・飯田健次郎/小学館文庫

〈個人的に〉
まず一言。映画は観ていないが、主演に玉木宏ってハマり役だと思う。
実際はどうかわからないけれど、本を読んだ感想としてはイメージズバリの配役だ。
かと言って映画館へ観に行こうとは思わないが…
さて、読書感想としては「面白い」
やっぱり、このテの話を福井晴敏に書かせたらピカイチ。
と言っても福井晴敏は監修で、著者は別の脚本家だけど…
戦争物にしては重過ぎず軽過ぎずでさらりと読める。
ただ、潜水艦を扱う物語は内容が似てしまうのはしょうがないのかなあ。
なんかどこかで読んだ感じがするのは僕だけだろうか…
超個人的お勧め度:★★★★
〈あらすじ〉
64年の時を超えてアメリカから届けられた一枚の楽譜「真夏のオリオン」。過酷な時代の秘められたドラマがいま甦る。第二次世界大戦末期。米軍の本土上陸を防ぐため出撃した潜水艦イ-77号の若き艦長・倉本孝行。それを追いつめる駆逐艦パーシバルのスチュワート艦長。甚大な損傷を受けたイ-77号に残された酸素はあと1時間。「俺たちは死ぬために戦ってるんじゃない。生きるために戦っているんだ」。倉本と乗組員の知力の限りを尽くした作戦が開始された。『終戦のローレライ』『亡国のイージス』の福井晴敏が4年ぶりにおくるエンターテイメント映画を完全ノベライズ。(背表紙紹介文)
〈目次〉
プロローグ〜六四年前の日記/沖縄沖へ/深海からのメッセージ/祈り/フェイク/最後の号令/エピローグ〜Sincerely yours
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<<立会い出産>>
5時20分
ナースステーションから漏れる光、非常灯の緑色のほの暗い光。
早朝の病院の廊下は薄暗く、ひんやりと静まりかえっていた。
オマケのように片隅に置かれた黒い椅子は、闇に溶け込み静かに佇んでいる。
僕は息を潜め、オマケのような椅子にオマケのように座る。
産婦人科。
ここは女性が主役をはる為の大きな舞台である。
男は脇役や黒子にもなれない。
まさにオマケ的な存在なのである。
分娩室の脇で、僕は闇と同化しそうになりながら考える。
—やっぱりドラマは大げさだった。あのよくあるシーン。分娩室の前で、あたふたと心配そうに待つ夫…いくらなんでもありゃねえな。
僕は妙に冷静に思うのだった。
嫁さんが分娩室に入った時間の確認。
病室の目覚まし時計のアラームを設定したままで来てしまった事。
デジカメの電池を確認する事。
生まれてすぐに連絡する先の手順。
ドラマのワンシーンが大げさだった事…
実に色々な事を冷静に考え続けていた。
ーしかし寒いなあ。冷房強いんじゃないか?分娩室に入る前にトイレへ行っておこう…
トイレで用を足しながら思う。
ーあれ?俺さっきもトイレ行ったよな。確か病室から分娩室に移る時だから、ついさっきじゃん。その前は…
その時、いつ分娩室に移っても大丈夫なように、病室で何度もトイレに行っていた自分に気付く。
ー俺、超トイレに行ってんじゃん。俺、ビビってる?俺、だから寒く感じるの?ちょっと!俺、あたふたしてんじゃん!
ふと、ポケットの中の安産のお守りに気付く。両手で握る…
「丈夫な赤ちゃんが無事に生まれてきますように…」
ーええ〜!俺、あのよくあるドラマと一緒じゃん!だいたい俺、神様なんて信じてないじゃない!
その時、分娩室の扉が開く。
「モアイさ〜ん。奥さんの準備が出来ましたよ。ご主人も白衣着て分娩室にどうぞ」
ーき、きた。ついに来たか…
最初は、出産に立会う事は考えていなかった。
だって、人が痛がっているのを、何も出来ずに見てるだけなんて有り得ないでしょう?
だって、血がいっぱい出るんでしょう?絶対ムリでしょう。
だって、俺がいても全く役にたたないでしょう?経験者の義母が立ち会った方が良いでしょう。
そう思っていたのだ。
しかし、友人や姉の話を聞くうちに、なんとなく立ち会う事となったのである。
0時30分 病室
陣痛の間隔が、時計で計ったかの如くきっちり10分間隔となる。
まさに生命の神秘!何故ここまで正確なのだろうか?
地球の自転の影響か?それとも月の引力か?
僕は時計を見て嫁さんに言う。
「9分が経過しました…」
嫁さん
「…きた!きた!きた!…ウウッ!」
僕は助産婦さんに教わった腰のマッサージを始める…
「ウウッ、い、痛い…ウウッ…痛い…」
「痛いか?落ち着いて息を吐くんだ…フー」
「い、痛い…」
「そうか、頑張れ!」
「ウウッ…痛い…もっと軽く…押して…軽く…」
「お、俺か?俺のマッサージが痛いと言ってるのか…そ、そうか…」
だいたい陣痛の痛みなんて男にわかる訳がない。
何処がどう痛くて、どうすれば楽になるかなんて想像つく訳がない…
でも陣痛は続く…
そして下手なマッサージも続く…
10分間隔の陣痛が、正確なまま7分間隔になり、3分となり…
ついに分娩室へと向かう事となる。
諸々が色々とあり、万全とは言えない状態での分娩室入り。
緊急入院の末、状況が悪ければ帝王切開も視野に入っていた状態である。
だが、ここでも生命の神秘が…
嫁さんの身体か、お腹の中の赤ちゃんかが危険を察知したのだろうか、初産の通常では考えられないスピードで子宮口が開き始めたのである。
そして分娩室入りして数十分がたった頃には、
母子共に万全の体制でその時に挑む事となる…

5時40分 分娩室前
薄暗い廊下で僕は寒さに震えていた。
「モアイさ〜ん。奥さんの準備が出来ましたよ。ご主人も白衣着て分娩室にどうぞ」
ーき、きた。ついに来たか…
緊張して分娩室に足を踏み入れる…
神聖な空間、張りつめた空気、緊張感。
分娩台の上で嫁さんが痛がっている。その頭の右上に立つ。
言葉がかけられない。全ての言葉が軽々しく思えてしまう空間。
ここは「頑張れ」などと軽々しく口に出せる場所ではないのだ。
僕に出来る事は、全てがスムーズにゆくよう、片隅でひっそり佇んでいる事だけだ。
時間はジリジリと進む。僕の寒気はしつこく続いている…
一心不乱に我が子を生み出そうとする嫁さんの姿は、僕の心を激しく打つ。
助産婦さんの指示が変わる。
「次の張りが来たら、今度は大きく息を吸って、フッフッフッ…と小さく吐いてみましょう」
陣痛…
「はい、いいですよ〜もう出てきてますよ〜大きく吸って〜フッフッフッ…」
その瞬間、僕の思考は完全に停止してしまう。
ただただ目の前で起こっている出来事が、画像として頭に刻み込まれてゆくだけ…
と言う訳で、
頭に刻み込まれた映像に後日コメントを加えると、こんな感じになった。
「はい、いいですよ〜もう出てきてますよ〜大きく吸って〜フッフッフッ…」
嫁さんはいきみながら指示に従う。
フッフッフッ…
「はい、出てきてますよ〜」
ーわっ!で、出てきた。あ、頭…
通常は見えないはずなのだが、
僕の立ち位置と嫁さんのいきみ姿勢の絶妙な角度で、
僕はしっかり我が子の誕生の瞬間を目撃する事となった。
フッフッフッ…
吐く息と一緒に、少しだけ見える頭がゆっくりと右に回り始める。
ーわわっ!出てくる時って本当に回りながら出て来るんだ…
ーわわわっ!頭が全部でたー!肩がつっかえて首が絞まっちゃわないのか?
ーわわわわっ!全部出てきた!ぬるっと?つるっと?いや、ぬるっと出た!
ーわわわわわっ!撮らなきゃ!写真撮らなきゃ!そういえば血なんて言うほど出てないじゃん!
ーわわわわわわっ!へその緒繋がったままの写真逃した!だからデジカメって嫌いなんだよ!
ーわわわわわわわっ!なんて大きな泣き声だ!
ーわわわわわわわわわわわっ!!!
ー…………………………………………
6時20分 分娩室
「おめでとうございます。女の子ですよ。はいどうぞ」
冷静な助産婦さんが赤ちゃんを抱き上げ、にっこりほほ笑みながら言う。
母と子の始めての対面である。
嫁さんが手を伸ばす…
僕ははたと我に返り、カメラのシャッターを押す。
いつもワンテンポ遅れてシャッターが切られ、
何度となくシャッターチャンスを逃してきたこのデジカメ。
しかし、今回ばかりはそのシーンを見事に記録したのであった。

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